新聞奨学生
大学受験に失敗して東京の新聞専売所に奨学生として入って、新聞配達しながら予備校に通った。親の脛(すね)にかじる所など無いのはわかっていたから、高校まで上げてもらっただけでもありがたかった。高校3年生の冬、誰にも相談せずにさっさと新聞奨学生と受験の願書を出して、手続きが済むと上野行きの汽車に乗り込んだ。
受験の宿は新聞社が用意してくれた下落合というところの新聞専売所の一室だった。金はかからない。しかし、合格発表の掲示板に探す番号は無かった。すぐに、予備校の入学手続きをとった。入学金も授業料も全部新聞社が出してくれた。考えてみれば何んともありがたい制度である。学費のほかに食う寝る所に住む所まで付いて小遣いにしては多めの給料もくれる。
現在も、本人が望めば経済的に苦しくとも上級学校へ行けるこの制度は生きている。ところが、志願者は年々減って、厚別区の専売所に聞いたら、「大学の近くでも新聞配達の主役は奨学生からパートに移行している」のが現状なのだという。何年も不景気だといわれながら、なぜなのかわからない。
働く所が少なくなって、普通の人が普通に働いて生活できる社会基盤が弱くなっている。地方に仕事がないのは仕方がない、特別な能力がないものは安定した職に就(つ)けない…そんなとんでもない社会になる危険性すらはらんで来た。高度成長にバブル…人が夢から覚めずに世間を甘く見て生き、そのノリでまるで人気投票かのように無責任に政治家を選んでいるうちに、儲けるのに都合のいい人たちにうまく騙(だま)されていた、そんな側面もあるのかも知れない。
深刻な不況と、新聞奨学生の減少…そのギャップに、何か割り切れないものを感じている…。
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